ドイツワインの魅力

皆さんはドイツワインというとどういうものをイメージしますか?茶瓶に入った「マ・・ナ」が頭に浮かびますか?それとも「黒猫」のラベルですか?私は初めてのドイツワイン(と言うより初めてのワイン体験)は「マ・・ナ」でした。もう十数年も前の出来事になってしまいました。「こんなに甘酸っぱくて美味しいワインがあるんだ!」これが第一印象でした。国産ワインもこの頃は甘口全盛でしたね。「甲州ワイン」がよく店頭に並んでいました。基本的に日本人は甘口のものが大好きですよね。

「マ・・ナ」に使われている葡萄は「ミュラートウルガウ」という品種です。現在ドイツで最も多く栽培されている品種で、葡萄の全耕作面積のうち21%を占めます。リースリングの交配品種で、スイス出身のH.ミュラートウルガウ博士によって、1882年ドイツのガイゼンハイムにおいて開発されました。早熟性で、9月末にはもう果実が完熟します。花のような、マスカットを思わせる風味でマイルドな味わいが特徴です。普及価格帯のワインに多く使われています。若いうちに飲むのが最適です。

ドイツワインと言えば「リースリング」が極めつけです。私もこれに魅了された一人です。これはドイツワインを代表する最高級葡萄品種で、ミュラートウルガウに次いで2番目に多く栽培されています。小粒の果粒は晩熟性で、10月から11月に完熟します。この長くゆっくりとした熟成期の間に豊かなアロマが生まれ、甘味と酸味の絶妙なバランスが生まれます。特に、モーゼル、ラインガウ、ミッテルライン、ラインファルツにおいて、この葡萄の真価を発揮したワインが出来あがります。

ドイツワインは熟成を楽しめるのか?

「ジャーマン ワイン レヴュー 1/92」誌に、ステュアート・ピゴット誌のドイツのオールドヴィンテージワインについての記事が掲載されました。大変興味深い内容ですので、少し抜粋してみます。

----「ドイツワインについて知識がすこししか無い人でも、ドイツワインの自然な軽さとフレッシュさが、現在の世界的な白ワインのトレンドに完璧にあっていることを知っています。が一方で、偉大な古いワインになる可能性があることを知っているワイン愛好家がいかに少ないかに、私は何度も驚いています。米国で最近行なわれた1990German Rieslingの一連の試飲会の折に、私が紹介したシュペートレーゼやアウスレーゼが少なくとも10年はセラーで熟成させる(保管する)ことが出来ると言う私の説はしばしば驚きを持って迎えられました。これらのワインは、赤ワインの方が白ワインよりよく熟成する、またもし白ワインを熟成させるならフルボディーのワインの方が軽いワインよりよく熟成するという誤った説の犠牲者です。

私が今までテイスティングした沢山のGerman Rieslingを振り返ってみると、有名な蔵元の素晴らしいヴィンテージのワインのほとんどが感動的でした。有名でない生産者の古いワインの中にも、そのフレッシュさとキャラクターが感動的なワインは沢山あります。それではなぜ世界は、古いワインとなると、ボルドーについては、書き、語り、考えるのにドイツについてはそうしないのでしょうか?答えは、「ドイツワインは若い間に飲むように作られている」と言うワインジャーナリストとワイン商の先入観と、しばしば行なわれ、上手く宣伝される、古いボルドーワインの年代試飲が、結びついたものであるといえます。誰も古いGerman Rieslingで同じことをしようとは考えません。それゆえにGerman Rieslingについては誰も書かず、語らず、考えないのです。そしてそれ故に、誰もそのような試飲会を企画せず、それゆえに・・・・・・その悪循環です。結果的に、伝説的なドイツワインはほとんど無い、という事になります。

伝説づくりと、1990Vintage German Rieslingを買って、地面の穴に埋め、20年か30年良い状態で保存すれば、大体そのワインのピークにくるという事を、もう少しワイン愛好家に納得させるためには、どうして偉大な古いGerman Rieslingがそんなに特別なのかを説明しなければなりません。最も明白なのは、フレッシュさと熟成の並外れた結合(マリアージュ)です。清々しく、爽快で、すぐに官能に訴えてくる一方で、同時にいつまでも人を魅了します。ブーケにおいては、その充実したアロマティックな複雑さの中で感じ取るのが難しい、かすかなニュアンスに満ちています。口の中では、他のワインでは太刀打ちできない濃縮とデリカシーのまぶしい程の激変があります。そのような経験を沢山の人々と分かち合えないのは残念ですが、個人的にはそのようなワインは、知人と二人だけで、ブラインドで飲むのが一番楽しいと言うことを認めなければなりません。」----------

と言ったように、ボルドーの赤やブルゴーニュの白など以上にドイツワインが熟成して良くなる可能性を持っている事、それにもかかわらずそのことがほとんど愛好家の間でも知られていないことを述べています。

リースリングは醸造過程においてほとんどが古樽かステンレスタンクで醸造されます。シャルドネのように新樽での醗酵や熟成は行なわれません。それは何故か?葡萄自体に独自の個性があるからです。シャルドネの場合は個性の無いのが個性と言われています。それゆえに新樽の使用などによってプラスアルファーの個性が花開くのです。「モンラッシェ」「コルトンシャルルマーニュ」「ムルソー」が新樽を使用しないで作られたらどんなワインになるでしょうか?おそらくあまり魅力のないものになってしまうでしょう。

そこでリースリングです。若いうちは青リンゴを思わせる清々しい香りが特徴です。熟成するにつれてゴムや石油を思わせる香りが出てきます。高貴な老ね香(ひねか)とも言われます。なんとも形容できない魅力的な香りです。この香りに甘味と軽快な酸味が絶妙に絡んでくるのです。ドイツ以外の国ではなかなか出せない味わいです。シャルドネが辛口白ワインの「王様」だとしたら、リースリングは「女王」でしょう。若いうちは「お姫様」で熟成するに連れて「女王」へと変身していきます。これって誉め過ぎでしょうか?いいえ、そんなことは有りません。いかに私を魅了したドイツワインをいくつか挙げます。

eitel61
johanis76
maxin76
erden71

1.アイテルスバッヒャー・カルトホイザーホーフベルガー・クローネンベルク リースリング アイスヴァイン・アウスレーゼ’61

2.シュロス・ヨハニスベルガー アウスレーゼ’76

3.マクシミン・グリュンホイザー・アプツベルク アウスレーゼ’76

4.エルデナー・プレラート リースリング ベーレンアウスレーゼ’71

3番と4番は約10年ほど前に飲んだものですが、これでドイツワインの世界に引き入れられてしまいました。1番は昨年飲んだのですがアイスワインのこんなに古いものは初めてだったのですがまだまだ若くフレッシュな酸味に言葉を失いました。、2番は一昨年飲みました。ラインガウワインの代名詞的存在ですがその価値を思い知らせてくれました。

皆さんもドイツワインの美味しさを再確認して見ませんか。

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